不動産売買・賃貸借

不動産売買・賃貸借

不動産は高価な買い物です。買主は少しでも安く買いたいのに対して、売主は少しでも高く売りたいという希望を持っていますから、利害は対立します。それぞれの立場からポイントを確認しておきましょう。

FLOW

不動産売買の流れ

Buyer point

1.物件を十分に確認する

不動産購入は高額の取引となりますから、信頼できる不動産業者から重要事項の説明を受け、疑問点は全て払拭してから手続を進めるようにしてください。
また、万一、物件に問題があることが後日判明した場合に補償があるのか否か、その期間制限なども踏まえて、代金を検討すべきです。

2.手付金の支払いと違約金の定め

手付金は、トラブルなく契約が実行されれば代金に充当されるものですが、契約にトラブルが発生したり、契約の実行に至らなかったりした場合のために、2つの機能(意味)を備えています。1つは、契約が成立したことの証拠としての機能、もう1つは、手付金を放棄すれば契約を解除できる機能です。
また、違約金とは、買主・売主のどちらかが義務を履行できなかった場合に、損害が発生するか否かにかかわらず負担させられるものであり、売買代金の2割程度に設定されていることが多いです(宅地建物取引業者が売主となる宅地建物の売買契約においては、「損害賠償額の予定」と「違約金」との合計額は売買代金の2割を超えてはならない。宅地建物取引業法第38条)。

3.購入資金を融資で工面する場合

この場合は融資特約(融資の承認が下りなかった場合には白紙解約できる旨の条項)を盛り込むようにしてください。この条項があれば、融資の審査が通らなかった場合にも違約金の支払義務は発生しません。

Seller point

1.後日判明した不具合に対する責任の有無

中古物件を売却した後に、物件に不具合が発見されることは少なくありません。その修繕費用を売主が負担しなければならないと なれば、それを見積もって売却価格を決定すべきです。そこで、売主の立場からすれば、いわゆる「瑕疵担保責任」について注意が必要です。また、最近は、環境法制や環境意識の高まりから、土壌に残留する有害物質が問題視されることが多くなりました。売買契約において、「土壌汚染については責任を負わない」という内容が盛り込まれれば、そのような条項があることを前提に売買代金額が決定されます(買主はリスクを考慮して、減額を要求してくるかもしれません)。売主に、有害物質が残留しているという認識がない場合にはそのような交渉がなされないまま、売却実行後に有害物質が発見され、売主が多額の損害賠償請求を受ける事例も生じています。 工場用地などの売買に際しては、「土壌汚染の責任追及」というリスクについての検討が重要となります。

2.権利関係の抹消

売主の所有物件に第三者の権利が設定されている場合には、その抹消を行い、買主に対し完全なる所有権を移転しなければならないとするのが一般的です。「権利」の代表例は抵当権(根抵当権)です。特に、売買代金額よりも抵当権者等の債権額の方が大きい場合(オーバーローン)は、債権者の同意を得ることが必須であり、同意が得られなければ、売却が実行できません。債権者交渉と売却のための契約手続を同時進行させる場合、つまり、債権者の同意が確実に得られるかどうかが不明の場合には、「本契約は、抵当権者等との抹消合意が得られることにより効力を生じる。抹消合意または許可が得られない場合、本契約は無条件に失効するものとする。」等の特約を盛り込むなどして、リスクを回避しておくべきです。

Real estate lease

賃貸借について、まずは、契約書のチェック事項を確認しましょう。

①保証金・敷金
保証金や敷金は、賃料の不払いや部屋の毀損についての損害賠償の担保となるものです。そのため、本来は、差し引くものがなければ全額返還されることになりますが、「保証金の償却」や「敷引」として、返還の際に一定額が差し引かれることがあります。特に、「保証金の償却」は、契約期間(退去までの期間)に応じて設定されていることがありますので、予定している賃借期間を踏まえて、合理的かどうかを確認しましょう。
なお、マンションやアパートのような物件については、「敷引は無効である」とする裁判例もでていますが、いずれも「消費者契約法に照らして無効」という理由によるものです。つまり、賃借人が「消費者」である場合に限られます。テナントの賃借人は、「消費者」に当たらないため、「敷引は無効」という主張は一般的には認められていません。
②原状回復義務
賃借人は、退去時にその物件を「原状に復して」返還しなければなりません(原状回復義務)。回復しなければならない範囲についてトラブルになることがあります。予想外の費用負担が課されないよう、契約書の記載はよく確認しておきましょう。
③使用目的・社名の掲示など
通常、契約書では使用目的を限定し、それ以外の態様で使用すると「契約解除事由」に該当することになるため、契約書案に書かれた目的以外に使用するのであれば、事前に契約書への追加・修正を依頼しましょう。
また、この物件を、契約者である法人以外のグループ会社が利用する場合には、ポストやドアにそれら名称を掲げることもあるでしょう。社名の掲示が限定されたり、契約者以外の表示をすることが契約上禁止されていることもあるので、必要があれば、それを許してもらうよう、契約書の修正を依頼することになります。

2. 特約の検討

賃貸借契約の場合は、定型的な契約書が用いられていることも多いのですが、借りる側のニーズに応じて、ひな形と違う内容の合意(特約)を定めることは可能です。この場合、全文を作り替える必要はなく、最後に「特約」として列挙しておけばよいのです。

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